対人関係の心理とは何か?



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対人関係の心理とは

私たちは社会的存在であるといわれるように、一人で生きていくことはできません。

人嫌いで、誰にも頼らず一人で生きているという人も、買い物に行けばいやがおうでも人とかかわらざるをえません。あるいは、インターネットの世界でも通信の相手は人間です。生きてゆく上で、まったく人とかかわらないで生活することはきわめて困難です。

さらに人間は他の動物と異なり、自分の足で歩き、自分で栄養補給できるようになるまでに長い時間がかかります。この間、必ず誰か他者による養育がなくては、生きることができません。自分で気づく、気づかないにかかわらず「人間」は「人と人との間」に生きている存在なのです。

ここでは、対人関係の基礎として、社会心理学と臨床心理学からみた対人関係の理論についてその主なものを紹介します。

社会心理学からみた対人関係の理論

社会心理学の分野では、個人が社会の中で受ける影響や、仲間のなかで生じる関係のダイナミクスなどについて研究が進んでいます。

ここでは、対人関係に関する基礎理論を紹介します。

1.対人認知

ある人についての情報が与えられたとき、その情報からその人の性格、感情、態度などの内的特性を推測することを対人認知といいます。

ここで、情報とは、その人の外見、職業、出身地やその他の知り得る情報です。

たとえば、人の相貌からその人の性格を推定することがあります。表1は,人の相貌特徴から性格を推定すると、このように思われやすいという調査結果です。表から、骨細、色白、顔が小さく眉が細いなどの特徴をもつ人が、消極的な大に思われやすいことがわかります。

実際に、そのような相貌をもつ人も、付き合ってみるとそうでないことはよくありますが、よくわからない場合にそう判断してしまうことがあるわけです。これは、対人関係で気をつけないといけないことです。

表1 相貌特徴と性格特徴(大橋,1979)

相貌特徴 性格特性
第1群 骨の細い,色の自い,顔の小さい,顔のきめの細かい,眉の細い,耳の小さい,鼻の穴の小さい,唇のうすい,口の小さい 消極的な,心のせまい,内向的な
第2群 やせた,背の高い,面長の,鼻の高い 知的な
第3群 背の低い,血色のわるい,顔のせまい,目の細い,目の小さい,まゆ毛の短い,鼻の低い,口もとのゆるんだ,歯ならびのわるい 責任感のない
第4群 髪の毛のかたい,顔のきめの荒い,眉の逆八の字型の,あがり目の,ほほのこけた,かぎ鼻の 無分別な,短気な,感じのわるい,不親切な,親しみにくい
第5群 髪の毛のやわらかい,眉の八の字型の,目のまるい,ほおのふっくらした 分別のある,親しみやすい,親切な
第6群 血色のよい,額の広い,目の大きい,まつ毛の長い,鼻のまっすぐな,口もとのひきしまった,歯ならびのよい 分別のある,責任感のある,外向的な
第7群 ふとった,丸顔のさがり目の 心のひろい,気長な,知的でない
第8群 骨太の,色の黒い,顔の大きい,眉の太い,耳の大きい,鼻の穴の大きい,唇の厚い,口の大きい 積極的な

 

2.印象形成

よく第一印象という言葉を使いますが、これは他者に初めて会ったときにもつ印象のことです。

この印象の形成については、実験によって多くのことがわかっています。アッシュ(ASCh,S.E。1946)は、架空のある大物の性格特性として、「聡明な一勤勉な一衝動的な一批判的なー強情な一嫉妬深い」という性格特性を読み上げ、その人の印象を評定させます。

次に,別の被験者にその性格特性を後ろから逆に読み上げます。そして、印象を評定させると、先ほどと同じ性格特性群にもかかわらず、印象は変わります。

前者は、能力があり、欠点はあるがそれほどでもない大としてとらえられるのに、後者は、欠点のために能力が活かせない大という印象を与えます。これは、一連の情報が与えられたとき、最初の情報が全体の印象に優勢になることを表わしています。これを、印象形成の「初頭効果」と呼びます。

また逆に、最後の情報が優勢になる場合も確かめられており、「新近効果」と呼びます。

またアッシュは別の実験で、これらの一連の情報の中に、印象形成に特に重要となる中心特性が存在することを明らかにしています。たとえば、「知的な一器用な一勤勉な一暖かい一決断力のある一実際的な一注意深い」という7つの性格特性を提示した場合と、「暖かい」を「冷たい」に置き換えた場合、他の情報が同一であっても形成される印象はかなり異なります。

 

3.対人魅力

他者に対する好意はいかに形成されるのかという問題について、関心をもつ青年も多いと思います。

フェステインガーら(Festinger,L.etal。1950)は、大学に入学した学生のアパートを調査し、部屋の距離が近いほど友人になりやすいと述べています。物理的な距離が近いほど、友人になりやすいという結果です。

これは、距離が近いほど自然と接触の機会が増えるということが原因となっていると考えられます。何度も顔を合わせているうちに、親しみを感じやすくなりますし、また、近いほど付き合うのも容易です。

好意の形成については、多くの研究があり、他者に対する魅力の形成に及ぼすさまざまな要因が見いだされています。

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臨床心理学からみた対人関係の理論

1.対象関係論

臨床心理学においては「対象関係論」という理論が知られています。精神分析学の創始者であるS.フロイトの理論を基礎とするもので、精神内界(心の内側ともいうべき世界で自分自身の意識できないレベルを含む)に内在化された対象(内的対象)と現実にある対人関係との相互作用などを扱う理論です。

たとえば、若い女性が恋愛関係のなかである特定の状況になると必ず葛藤が生ずる場合、対象関係論の視点からは、女性の内的対象である父親との対象関係-たとえば幼児期からの葛藤-の反復であると考える、などです。

対象関係論にはさまざまな学者による理論の発展がありますが、基礎となるのは乳児期の対人関係,つまり多くの場合母子関係の発達です。

2.良い自己と悪い自己,良い対象と悪い対象

赤ちゃんにとって生命にかかわる大切な欲求は「おっぱいが欲しい」です。この欲求が授乳により満たされると、満足感を得ることができます。

このときの自己は満足した「良い自己」であり、欲求を満たしてくれた母親は「良い母{対象}」となります。一方、何らかの理由で欲求
が満たされないと、飢餓などの苦痛体験を得ることになります。

このときの自己は破滅の不安にさらされた「悪い自己」であり、苦痛体験を与えた母親は「悪い母(対象)」となります。

「良い自己」の体験が「悪い自己」の体験を上回ることによって、次第にこの両者は統合され[統合したパーソナリティ構造]となり、そしては親は「安定し統合した対象」となります。

3.ウィニコットの対象関係論

ウイニコットはイギリスの小児科医で、日々診察で出会うのは赤ちゃんとそのお母さんであったことから、母子関係に注目し、独自の対象関係論を発展させました。

「独立した赤ちゃんはいない、いつも母との一対として存在する」という言葉は有名です。

ウイニコットの母子関係の発達は「依存」のありようによって、3段階に分けられます。

生後6ヶ月頃までが母子未分化な「絶対的依存の段階」で、移行期を経て3歳頃までが次第に母子分化した「相対的依存の段階」。3歳以降が母子関係(2者関係)から3者関係へと発達する[独立への方向性をもった段階]です。