乳幼児期と母子関係について|私の子供時代をみてみよう



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乳幼児期と母子間関係

私たちが生まれてから最初に出会う対人関係は母子関係です。そして乳幼児期の重要性は、「三つ子の魂百まで」ということわざを引き合いにするまでもなく、感覚としてよくわかるものでしょう。

心理学では、この乳幼児期の母子関係の研究として興味深いものがあります。

ハーロウ(Harlow,H.F。1958)は、赤毛サルの子どもを用いて次のような実験を試みました。

まず、子ザルを母親から隔離して、針金でつくった母親大の人形と、布でつくった母親大の人形を与えたところ、子ザルは布でつくった人形にしがみついて過ごすことが多かったというのです。この傾向は、両方の人形から哺乳できるようにしてあっでも同様で、針金の母親人形から哺乳はするものの、大きな音に驚いたときにも、布の母親人形にしがみつく反応が見られたそうです。このことは、空腹を満たすだけが母親との関係ではなく、その感触を含めて、安心感を得ることも重要な要素であることを示しているといえるでしょう。

また、スピッツ(SpitZ,R.A。1945)は、乳児院の子どもたちを観察し、栄養が十分であっても、発育があまりよくないことを指摘しています。そして、その子どもたちは、極端な場合は泣いたり笑ったりすることもなくなり、食欲も衰えて回復できなくなってしまうというのです。

もちろん、この研究は過去の研究で、現在の乳児院では保育士が担当制をとったりして、かかわりを強くしてこのようなことのないように配慮されています。しかし、こういった実験や観察から、私たちがなんとなく考える以上に母子関係は、子どもにとって大きな影響をもっていることがうかがわれます。

 

母子関係は相互関係

私たちは母子関係というと、母親がどのように愛情を注いだのかといった観点から見てしまいがちですが、心理学では母子関係は相互関係ととらえています。

つまり、子どもの反応が母親の母性的な行動をより刺激して、またその行動が子どもの母親を求める行動をより引き出していくといった、相互関係が母子関係の基礎となるといわれています。

 

マーラーの分離一個体化理論

児童精神医学者のマーラーは、子どもの発達の観察から子どもの精神発達を「分離一個体化過程」としてとらえています。

子どもは生物学的に生まれても、心理学的にはまだ一個の独立した人間としては生まれておらず、生後3年くらいかけて母親との絶対的依存、共生的関係を経て、やっと分離一個体化し、心理的に誕生するというものです。

つまり、この理論では、正常な分離一個体化か達成されるためには、健全な共生的関係が、親子の間で十分に体験されていることが重要であるというわけです。

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愛着理論

愛着理論とは、イギリスの精神分析学者であるボウルビイ(Bowlby,J.)が提唱した理論で、母親との情緒的で親密なつながりに関する理論です。

ボウルビイは、孤児院などで母親と離れて生活する乳幼児の情緒的発達の問題を見いだし、マターナル・デブリペーション(母性剥奪)という概念を提唱しました。彼の理論の中でも有名な概念として知られています。

最近心理学のさまざまな分野で注目を集め、盛んに研究が行なわれているのが内的作業モデル(TnternalWorkingModels、 以下,IWM)という概念です。

IWMとは愛着関係のなかで形成されてゆく、個人に特有の自己一他者関係モデルで、「他者は自分の要求にどの程度応じてくれる存在なのか、自分は他者にどの程度受け入れられている存在なのか」といったことに関するモデルといえます。

IWMについてはさまざまな測定尺度が開発されていますが、多くが幼児期の愛着パターンに対応した以下の3パターンを測定するものとなっています。

  1. 安定型 愛着パターン:他者は応答的で自己は援助される価値のある存在という表象をもつもので、「私はわりあいにたやすく他人と親しくなれるし、また相手に気楽に頼ったり頼ら
    れたりすることができる。仲良くなった人たちとはこれからもずっと親しくしていけると思うし、また安心してお瓦いに何でもうちあけられる(詫摩ら,1988)」というタイプです。
  2. 同避型 愛着パターン:他者は拒否的で援助が期待できないことから、自己はこれを補うための自己充足的な存在という表象をもつもので、「私はあまり気軽に人と親しくなれない。
    人を全面的には信用できないし、人に頼ったり頼られたりするのがへた(詫摩ら,1988)」というタイプです。
  3. アンビバレント型 愛着パターン:他者に対して信頼と不信のアンビバレントな表象をもち、自己不全感が強く、「時々人はいやいやながら私と親しくしてくれているのではないか
    と思うことがある。たとえば恋人が本当は私を愛してくれていないのではないかとか、私と一緒にいたくないのではないかとしばしば心配になることがある(詫摩ら,1988)」というタイプです。

愛着のパターンの可変性

多くの研究から、最近では、愛着パターンは生涯を通じての対人関係を決定づけるような土台となるものの、それは決して不変ではなく、その後の体験や重要な他者との出会いなどによっ
て変化しうるものであるということが言われています。

臨床心理学分野での研究

1990年代から被虐待児や発達障害児における、愛着パターンなどの研究が盛んに行なわれています。特に臨床領域においては、治療による愛着パターンの修復、あるいは改善が重要な研究テーマとなっています。

幼児期の愛着と青年期の対人関係

幼児期の愛着パターンが、青年期の愛着パターンに関連するという報告や、安定した幼児期の愛着は、青年期の安定した対人関係を示唆する研究が比較的多く見られます。ただし、幼児期と
の関係を測定する場合、回想法(幼児期の母との関係を思い出して質問紙に答える)による研究が多く、結果が実際の過去の母子関係を反映しているのかといった疑問が残り、こうした研
究は,まだその途上にあるといえるでしょう。