想像力と創造力とは何かを考えてみよう



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想像力と創造力

今、地球の温暖化をはじめとして、いろいろな場面で環境問題が取り上げられています。

そこでは、10年後の地球、20年後の地球、50年後の地球といったデータが示されて、現時点で行なうべきことなどが論じられています。確かにこういったデータを見ると「大変なことになってしまうかもしれない」という思いがわいてきますが、その思いは漠然としていて、あまり具体的なイメージを伴っていないことも多いでしょう。

子どもの頃には、大人が「将来困るから」といって勧めることも、あまり真剣に努力できません。その意味は、本当に困ったときにはじめてわかるということも少なくありません。

また、事件や事故のニュースを聴いても、自分のこととは結びつかず、同じような過ちを何人もの人が繰り返してしまいます。

こうした現象は、想像力に深く関係しています。ゴミを捨てようとするとき、地球環境の課題が、あるいは自分が何か行なおうとしているとき、過去に新聞の報道などで知った事故の情報がなぜ思い浮かばないのか、といったことが問題となります。このように自分が過去に得た情報と現在の自分との関係について、結びつけて判断をするときにも想像力が求められるということです。

また、対人関係で相手の思いを理解するときにも、つまり、共感するときにも想像力は非常に重要です。

そして、そこで必要な対処や工夫を生み出す行為は、創造的活動であるといえます。いろいろな情報やまったく別の視点を取り入れて、創意工夫をしながら新たな対処を考えていくわけです。その創造力を生み出すためにも、想像力が必要となります。

つまり、「どこをどうしたらどうなるか」といったことを想像しながら、方針を探っていく必要があるからです。

想像力が働かないと、創造的活動も困難になるし、見通しを持って生活を組み立てていくこと、そして人とかかわりながら生活することも難しくなってしまいます。

記憶すること

ヴィゴッキーは、旧ソ連の心理学者で、発達と教育の理論では現代でも重要な示唆に富んだ理論を提供しています。

ヴィゴッキーは、人間の大切な機能として記憶することをあげています。記憶することによって、過去に体験したことと同様の状況に対して、対処することができるわけです。

その活動は過去の再現で、新しい活動ではありません。しかし、この機能によって、私たちは環境に適応することが容易になります。

想像と創造的活動

私たちは、記憶による過去の体験の再現だけではなく、それまでに経験していないイメージを思い浮かべることができます。

たとえば、見たこともないものを思い描いたり、現実には体験していないことを考えるといった活動です。

こういった活動は、想像とか空想と呼ばれています。日常的に想像というと、非現実的で実際には重要な意味をもたないようなイメージをさしますが、本当は芸術的創造、科学的創造、技術的創造を可能にしているのは想像力であると、ヴィゴッキーはいいます。

ここでいう創造的活動とは、歴史的な発明のようなものだけではなく、ごく日常のありふれた活動も含まれているとしています。そして、この創造的活動を支える想像は、過去の記憶を複合的に用いて、それまでに体験したことのないものを作り出すことをいいます。

創造的な想像のメカニズム

創造的活動へつながる想像のメカニズムを、ヴィゴッキーは次のように説明しています。

まず、経験の基盤となっている記憶は、体験した現象をとらえるところ、つまり知覚から始まります。しかし、知覚したものそのままでは、まったく同じ状況でなければ再現できません。

そこで、この知覚されたものを、加工していく過程が必要となります。その第一の過程は、分解であるといいます。後にさまざまな要素を連結させるために、個々の要素を分解しておく必要があるわけです。

次の過程は、分解した要素を修正することとしています。たとえば、体験したことを過大に修正して保持しているといった現象がこれにあたります。そしてそこには、情動的側面が深く関与しているとしています。

最後の過程は要素を連合し、統一することであるといいます。その過程によって、新しい状況に適合した想像が生み出され、必要とされる創造が可能となるといえるでしょう。

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想像力が創造へ結びつく要因

ヴィゴツキーは、これらの過程が成立する基本的な要因は、人間が環境に適応しようとする要求であるといいます。すなわち、不適応であることが創造の動因となるということです。十
分に満ち足りている状態は、創造的活動を必要としないからです。

さらに、創造が実現するためには、環境の要因が重要であると主張しています。技術的な創造を例にとると、いくら想像力を駆使して新しい機械を思い描いても、それを実際に作り上げるには、その技術を支える環境が必要となるわけです。想像力を創造へと実現していくためには、その活動を可能にする豊かな環境が不可欠といえるでしょう。

想像力と現実との関係

ヴィゴッキーは、想像力と現実との関係について4つの側面に分けて説明しています。

  1. 想像力をいかに豊かにするかは、過去の現実体験が豊富であるかに依存している。
  2. たとえば、新聞を読んで自分が目撃していないことを知ることも想像の力であるが、こういった想像力は人問の現実体験を拡大することに役立っている。
  3. いくつかの要素を結合するときには、人間の内的過程が関与し、その要素が含んでいる情動の性質が似通ったもの同士が結びつきやすい。そして、その結合自体は、現実にないものであっても、体験した情動は現実である。たとえば、危険を想像したとき、その想像は現実ではなくても、恐怖感の体験は現実のものである。
  4. 想像による創造がなされたとき、その創造物は現実の存在となって新たな想像の要因となる。これは、機械などの科学的な創造だけではなく、芸術作品などが新たな情動を生む場合も含まれる。このように、想像と現実は円環的である。